腎盂腎炎
腎盂腎炎とは
腎盂や腎杯といった腎臓の組織が細菌(大腸菌など)に感染することで炎症が起きている状態を腎盂腎炎と言います。主な症状としては、腎臓(背中や腰)の痛み、38℃以上の発熱、吐き気、だるさといった症状がみられます。
なお腎盂とは、腎臓で作られた尿が最初に通る部分のことですが、細菌は尿道の出口から、膀胱や尿管を伝って、尿の流れと逆行する形で侵入していき、腎盂に達することで炎症が引き起こされるようになります。
ただ通常であれば、細菌が侵入したとしても尿と一緒に排出されることが大半なわけですが、先天的に尿路閉塞がある、前立腺肥大症や尿路結石などを発症している、免疫が低下する糖尿病患者である、細菌が付着しやすいとされる尿道カテーテルなどが尿道にあるという場合などに炎症を起こすリスクが高くなると言われています。ちなみに感染については性差もあり、尿道が短く、男性よりも膀胱の位置が下にある女性の方が感染しやすいです。また、菌血症や腎膿瘍といった重篤な病態に進行しやすいのも特徴なので早めの治療が望まれます。
検査と治療について
症状や訴えなどから腎盂腎炎が疑われる場合、血液中や尿中の細菌の有無、細菌がいる場合はその種類なども調べる細菌検査が行われます。さらに医師が必要と判断した場合は、腹部超音波検査や腹部CT検査といった画像検査を行うこともあります。
治療に関しては、主に抗菌薬(ニューキノロン系、ペニシリン系、セフェム系など)を用いますが、症状がよくなったとしても細菌がまだ残っていることもあるので、再燃を防ぐためにも、完治するまでは医師の指示通りにお薬を服用するようにしてください。また、水分をしっかりとって、排尿を促すようにすることも大切です。
なお適切な治療を行わないと細菌が血液中に侵入し、敗血症となって生命にも関わることがありますので、早めの診療が大切です。
腎結石
腎臓で作られた尿が集まってくる部分である、腎杯、腎盂に結石ができる病気です。そもそも結石とは、尿成分の一部が析出(液体状態から固体が分かれて生成)することで結晶化したものです。小さければ尿と一緒に自然に排出されますが、結晶化したものが集まり大きくなると尿路に留まるようになります。これを尿路結石と言い、存在部位によって4つに分類(腎臓(腎杯・腎盂)、尿管、膀胱、尿道)されます。腎臓内に結石があれば、腎結石と診断されますが、腎臓内の発生する場所によって、腎杯結石、腎盂結石など呼ばれることもあります。
なお腎結石は尿管結石と共に上部尿路結石というカテゴリーに属し、日本人の全尿路結石患者の9割以上を占めています。好発しやすい年代は30~40歳、女性の場合は閉経後に発症しやすくなると言われています。
主な症状ですが、結石が腎臓内にある場合は、ほとんど痛みが無いと言われます。稀に鈍痛や血尿などが現れることがあります。なお腎臓から尿管などに結石が移動すると尿管結石となり激しい痛み(疝痛発作)が起きることがあります。また、診断のためには、尿検査、画像検査(腹部CT検査、腹部超音波検査など)を行うことで確認できます。
腎結石の治療に関しては、痛みがある場合は鎮痛剤を使用しますが、結石が小さく症状がなければ経過観察のみとなる場合が多いです。大きな結石の場合は、体外から結石に向けて衝撃波を与えて破砕する体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や、大きな腎結石では皮膚から直接的に腎臓内に内視鏡を挿入して結石を破砕する経皮的腎結石破砕術(PNL)が行われます。最近はレーザーを使用した破砕方法も行われています。
尿管結石
尿管結石とは
尿路結石が尿管(腎臓と膀胱をつなぐ管)に発生している状態を尿管結石と言います。なお、結石とは、尿成分の一部が析出(液体状態から固体が分かれて生成)することで結晶化したもので、多くは石のように硬いものです。尿管結石は、腎結石と共に上部尿路結石に含まれ、ここで発生する尿路結石は全尿路結石患者の9割以上を占めます。なお、上部尿路結石の90%近くの成分がカルシウム(シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム)です。
ちなみに尿路結石に至る原因としては、内分泌・代謝異常(副甲状腺機能亢進症、痛風、尿細管性アシドーシス など)、高たんぱく食などの食生活、薬剤(ステロイド、尿酸排出促進薬 など)の影響、飲水不足、長期臥床、尿道に通過障害がある、尿路感染(感染結石)などが挙げられます。主に食生活、生活習慣の変化とともに近年増加している病気で、生涯のうちに尿管結石にかかる確率は、男性で7人に1人、女性で15人に1人といわれています。
尿管結石の症状
尿管結石は、腎臓で発生した結石が嵌頓することで発生します。これは簡単に言うと腎臓から飛び出た結石が尿管で詰まっている状態です。このような状態になると、尿の圧力が増していき、尿管がけいれんを起こすなどして、激しい痛みに襲われます。この激痛は、腰や背中から側腹部にかけて疝痛発作として現れます。このほかにも血尿や吐き気といった症状もみられることがあります。また結石が尿管から流れていくと膀胱や尿道へ達し、膀胱結石や尿道結石の症状を起こすこともあります。
検査と治療について
尿管結石を含む上部尿路結石の発症の有無を調べるには、尿検査や画像検査が有用です。画像検査では、超音波検査、腎・尿管・膀胱単純撮影、単純CTなどが行われますが、なかでもCTは、尿路結石を最も確実に診断できる検査になります。
治療につきましては、結石の大きさによって自然に排出されるのを待つ保存的治療か砕いたり手術などで除去する積極的治療かに分かれます。なお、どちらの治療であっても痛みを訴えているのであれば、症状を抑えるために鎮痛薬を使用します。
保存的治療では、水分を多く摂取(1日当たり2リットル以上)するようにして、結石を排出させやすくするほか、夜遅くなどの不規則な食事を避け、野菜を多くとる和食中心の食生活を心がける、適度に運動することも大切です。
積極的治療は10mm以上の結石がある場合、疼痛のコントロールが困難、、腎機能低下や感染がみられる場合などに行われます。具体的には、体外から結石に向けて衝撃波を与えて破壊する体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、尿道より管を通して結石を砕くという内視鏡手術の経尿道的尿管結石破砕術(TUL)、もしくは開腹手術を行います。
尿管結石は再発しやすい病気です。一度尿管結石になったあと、5年以内に再発する確率は50%と言われています。しょっちゅう繰り返す場合は、原因となる基礎疾患がないか、生活習慣に問題がないかなどをチェックし、再発を予防します。
腎がん
腎がんとは、腎臓からできる悪性腫瘍のことで、主に腎細胞がん、ウィルムス腫瘍(小児の腎臓に発生する悪性腫瘍)があります。
腎細胞がんは、腎臓内にある腎実質の細胞から発生するがんです。原因はほとんどが不明ですが、危険因子としては主に喫煙、肥満、透析患者、高血圧、VHL病など遺伝性の病気を発症している方などが発病しやすいとされます。50~60歳代の男性に多いですが、女性でも珍しくはありません。
主な症状は、血尿、脇腹から腰にかけての痛み、腹部が膨らむ(腹部腫瘤)、発熱などがみられますが、現在はこのような進行してから起こる自覚症状で見つかることは稀で、健診などの腹部超音波検査、CT検査でたまたまがんが見つかることがほとんどです。なお、腎細胞がんを発症し、放置状態が続くと肺や骨、リンパ節にまで転移することがあるので、早期発見・早期治療に努めるためにも好発しやすい年齢になりましたら定期的に健診などを行うことをお勧めします。
治療については、手術療法(外科的治療)による腫瘍摘出(根治的腎摘出術)が一般的です。なお、小さい腫瘍(4cm以下)であれば腎臓を部分的に切除する腎部分切除術を行います。また、既に転移をしていたり、手術による摘出が困難と医師が判断した場合は、免疫療法(サイトカイン)、分子標的薬、放射線療法などが行われます。
腎盂がん・尿管がん
腎盂や尿管の上皮は、膀胱と同じく尿路上皮(移行上皮)という種類の上皮で覆われているのですが、そこから発生するがん(尿路上皮がん)になります。これが腎盂で発生すれば腎盂がん、尿管で発生すれば尿管がんとなります。
症状としては、血尿は確認できるもののそれ以外目立った症状はない無症候性血尿のほか、がん細胞が広がることで側腹部に痛みが出ることがあります。発症原因は不明なことがほとんどですが、危険因子としては、喫煙、化学物質(芳香族アミン など)、医薬品(フェナセチン等)の使用などが言われています。
診断をつけるための検査としては、尿検査や尿細胞診、血液検査、腹部超音波検査、腹部造影CT検査などを行ないますが、画像検査だけでは診断が不十分であれば、内視鏡検査(尿管鏡検査、膀胱鏡検査)も行ないます。
治療につきましては、がんの進行具合によって異なります。転移がなければ、腎から尿管、膀胱の一部を切除する腎尿管全摘術を行うのが一般的です。転移がある場合や、がんの再発が認められたという場合は、化学療法、分子標的薬、放射線治療などを用います。
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